ナニックが日本で初めて本格的に木製ブラインドを取り扱い始めたのは1995年のこと。当初は米ナニック社のブラインドの輸入販売事業でしたが、やがて国内での需要の高まりに応えて自社開発・自社生産に踏み切りました。現在ではナニックブランドの精神を引き継ぎつつ、独自の国産木製ブラインドメーカーとして、その品質とデザイン性の高さでインテリア業界を魅了しています。創業当初から続く東京代官山のショールームと、生産と開発を行う埼玉戸田工場の二拠点体制で、木製ブラインドとウッドシャッターに特化したラインナップを展開中。ナニックの木製ブラインドの最大の魅力はその色数。基本カラーはなんと73色。さらに木材の種類やグロスレベルも豊富で、インテリアを自由にするブラインドとして、一般家庭のみならずホテルやインテリアデザイナーなど空間のプロにも愛され続けています。
フクダ・ロングライフデザイン
ナニックジャパン株式会社
ナニックの会社とブランドのご紹介をお願いします。
ナニックは元々アメリカのウィスコンシン州の企業でした。弊社の前身のパフ(現在も関連会社として東京渋谷区で営業中)の店舗のインテリアとして米ナニック社の木製ブラインドを取り付けたところ、当時まだ日本では珍しかった木製ブラインドに関心を寄せられるお客様が多く、需要があるなら、と輸入販売を初めたのがきっかけでした。ブラインドといえばオフィスなどで使われるアルミ素材の印象が強かった時代なので、木製の色鮮やかなブラインドはインテリアアイテムとしてとても斬新だったのです。
ところが、まだ今ほど通信や運輸が便利ではなかったため、アメリカからの輸送ではミスがあったり商品の到着が遅れたりとリスクが大きく、お客様のご要望に応えるのが難しいケースも多々ありました。2001年の9.11(アメリカ同時多発テロ)事件でアメリカとの貿易が大幅に制限されてしまったのも転機のひとつとなり、2003年に板橋工場を開設、その後2005年に現在の戸田工場に移転して完全自社生産に踏み切ったのです。
ナニックといえばアメリカというイメージがあります。
ナニックジャパンという社名からも米国企業の日本法人だと思われがちですが、実はその後、本国との貿易関係は終了して国内生産にシフトしたので、今では完全に日本独自の製品なんです。
もともと米ナニック社とは資本関係のない商社のような立ち位置だったのですが、アメリカでナニックブランドが大手に吸収されて生産ラインも変わってしまい、規模を縮小していくなかで、ナニックの精神と名前を引き継いで日本製ブラインドメーカーとして生まれ変わったのが我々ナニックジャパンなのです。
現在の商品展開について教えて下さい。
現在の主力製品は木製ブラインドとウッドシャッターです。カーテンのように壁にかけるブラインド製品と、ブラインドで培った技術を活用して可動式ルーバー(ブラインドの羽板の部分)を組み込んだ建具(扉や間仕切りなど)の特注生産を行っています。一般のエンドユーザーの方々と、ホテルや店舗、ハウスメーカーなどの業界の方々に、それぞれご愛顧頂いております。
有名なホテルやカフェなどではよくナニックのブラインドを見かけますが、一般の方にとっては「知る人ぞ知る」という通好みな立ち位置もナニックの魅力だと思います。
弊社はショールームが東京にしかないこともあり、特に関西や九州方面ではあまり知られていないのが現実です。「知る人ぞ知る」と言っていただけるのも嬉しいのですが、やはりこれからは全国の皆様にナニックの製品を知っていただけるように営業していかなくてはいけないと考えています。
ただ、弊社はブラインド業界の大手3社(立川ブラインド工業、ニチベイ、トーソー)とは会社の規模や取り扱い商品の数が大きく異なるのも事実です。国内のブラインドは大手3社で9割のシェアを占めるとも言われておりまして、実際、弊社に辿り着かれたお客様の多くが既に大手3社の製品を検討された経験のある方です。それでは我々ナニックには何ができるか?と考えると、やはり木製ブラインドに特化することが、カーテンからブラインドまで総合的に扱う他社との差別化になると思っています。
木製ブラインドのライバルと言えばカーテン。マンションでのカーテンとブラインドの比率は9:1ということで日本では圧倒的にカーテン人気が高いようですが、私はカーテンを開けるたびに埃が舞うのが嫌で、自宅では木製ブラインドを選びました。
インテリアの仕事をする上でも、ブラインドは光で空間を演出ができるというメリットがあり、カーテンの部屋と比べると大きく差別化ができます。専門家が考えるカーテンとブラインドの違いは何ですか?
街を歩くと一日中窓をカーテンなどでふさぎ、窓本来の機能を活かしていない建物をいたる所で見受けます。木製ブラインドは羽根の角度を変えることで、光や視野、風の流れを調節、そして外からの視線も遮ることができるという、カーテンには無い機能を備えています。さらに、遮熱効果にも優れています。また、経年変化にも強く、手入れが簡単なのも特徴です。それでも圧倒的にカーテンを選ばれる方が多いのですが、その最大の理由はコストだと思います。
ところが、特に新築時にカーテンを設置するためには、レール、ドレープ、レースなど揃えなくてはいけないものが多く、定期的なクリーニングの費用も考えると、長い目で見れば必ずしも木製ブラインドがコスト高だというわけではないのです。
それは家づくりにおいても同じです。一見初期費用が多くかかるようでも、長期的に見るとメンテナンス性に優れて品質の高い建材を使った方が長く使えて、かえって節約になるということがよくあります。
経年変化したアルミのブラインドは(ドラマの中などでも)だいたい端の方が折れているイメージがありましたが、木製だとその状態にならないのも魅力ですね。しかもナニックの操作性は木製ブラインドとは思えないほどの軽さです。
アメリカから輸入していた当時は操作が重くてクレームもあったんです。国内生産に際して日本の住宅に合うブラインドを研究する上で、やはり操作性の改良は必須条件でした。
一般家庭ではリフォームの際に木製ブラインドを採用されるケースが多いのですが、自ずとそのようなケースでは高齢の方が多く、ブラインドの上げ下げが容易であることはとても大きな課題なんです。そこで弊社では電動昇降ユニットも自社開発しました。
横型ブラインド、ウッドシャッター、バーチカル(縦型)とひとつひとつのメカ機構をすべて設計から自社で開発しています。自社で開発することで、品質をコントロールすることができ、改良のスピードも早くなりました。
以前は電動ブラインドは高額でしたが、ナニックは自社製品化することで価格も下がりましたね。
電動製品にはSF(シンプル・ファンクション)型とMF(マルチ・ファンクション)型の2タイプがあります。初めての方は実用的な機能を集約して価格を抑えたSF型を、店舗など複数台のブラインドを使用される方には開閉を連動するなど高度な機能を実装したMF型をお勧めてしています。SF型は5万円〜の追加費用でブラインドを電動化できるため、ショールームで体感された方のほとんどが電動を選びます。
インテリアデザイナーやコーディネーターは、デザインでナニックを選ぶ方も多いと思います。
街で木製ブラインドを見かけると、すぐにナニックの製品だとわかります。というより、ナニック以外の木製ブラインドはひと目で「これじゃない」と分かります。おそらく木の材質や塗装の美しさ、ディティールのすべてのクオリティに差があるんだと思います。
ナニックのデザイン性の高さの秘訣を教えてください。
デザインに関しては、弊社の甘露寺社長が旗を振っています。プロダクトデザイン、カタログ校正まで細部にわたり社長を中心に皆で検討に次ぐ検討です。
雑誌やカタログなどで木製ブラインドの写真を見るととても格好いいのですが、インテリアアイテムとして馴染みが薄いこともあって、全体のコーディネートを考えるとまだ素人には手を出しにくいかもしれません。
それはとても重要なことです。弊社では当初カタログには商品だけを掲載していました。その使い方を考えるのはデザイナーやコーディネーターの仕事だと考えていたのです。しかしそれでは消費者には木製ブラインドの本当の魅力が伝わらないことに気付き、今ではカタログにも使用シーンを掲載するにしています。
それなら消費者もイメージが湧きやすいですね。私たちコーディネーターでもお客さんに提案する前に実際にブラインドのある空間で光の入り方などを見てみないとわからない。浴室に設置できる耐水のブラインド(ウッドパーフェクト)を見てみたくて、設置されているホテルに宿泊しました。
ナニックのブラインドには基本カラーだけで73色ありますが、まだすべての色の施工写真がありません。だからマイナーな色が気になっても、どうしても選ぶ方は迷ってしまう。そのような状況を改善するためにも、WEBサイトやカタログでエンドユーザーにしっかりと伝わるように改善していく予定です。
一般の方が色見本を見たい場合はどうしたらいいですか?
弊社のWEBサイトでいくつか候補の色を決めてお問い合わせ頂ければ、実物の色サンプルをお送りします。また、お近くに代理店があればお問い合わせいただくか、フクダ・ロングライフデザインさんやcarbonさんのように弊社の製品を取り扱っていただいている店舗でも色見本をご覧いただけます。
色展開が豊富なナニックのブラインドは、消費者にとっては選ぶ楽しみ、コーディネーターにとっては提案する楽しみがあります。どの色の人気が高いですか?
実は、売れ筋の色は白系と茶系なんです。
年間出荷台数を見ると、半分を上位10色が占めています。しかもそのほどんどが白系か茶系で…。
えー!あんなにたくさん色があるのに?
それは意外ですね。色選びの楽しさがきちんと伝わっていないのかもしれません。フクダ・ロングライフデザインの家では漆喰の壁が標準なので、色を使ったアクセントウォールにするという選択肢が無いんです。その点、ブラインドであれば壁一面をカラフルにして遊びの要素を持たせることができて、個性的なフォーカルポイント(建築などの見せ場のこと)になります。
住宅メーカーの完成見学会に行くと白い壁と木肌ばかり。子ども部屋を子どもらしく見せるために本当は黄色や赤を使いたいけど、なかなか大胆に挑戦できないのが実情だと思います。そんな時にこそナニックのカラフルなブラインドが活躍しそうです。
カーテンは柄のあるものを選ぶことも多いので、ぜひ木製ブラインドでも色で遊んでほしいですね。
戸建て住宅にナニックの製品を設置するにあたって、何かおもしろいアイデアはありますか?
あるデザイナーがブライドにグラデーション塗装を施して、こちらの壁は森、こちらの壁は海、というように、弊社の木製ブラインドで空間をアート作品のように仕立ててくれました。
とある宴会場では、扉を開けたところにある布団張り(壁面にフェルトや綿などを入れて立体感を出す工法)の代わりにナニックのブラインドを設置して、LEDで光を当てて演出したケースもありました。
デザイナーからは必要なときだけ下ろして見せることができるのもブラインドならではの魅力だと言われました。
特注で色を作ることもできるのですか?
有償ですがオリジナルのカラーを調合することもできます。フクダ・ロングライフデザインさんの漆喰の家に合うカラーを作ったらおもしろいかもしれませんね。
吊るしのブラインド以外にも、建具としての可能性にも注目しています。
ナニックには「ウッドシャッターシリーズ」という建具のラインナップがあります。扉や間仕切りの一部に木製ブラインドのルーバーを組み込んだ製品で、家の中でも光や風を通すパッシブデザインのアイテムとしてハウスメーカーなどでも採用していただいております。
ウッドシャッター用に新たに開発したチルト機構(ルーバーの角度を調整する機能)で、ルーバーを一枚動かせばすべてのルーバーが連動して動く仕組みなので開閉が簡単です。家の中で視野をコントロールできる建具はウッドシャッターならではで、すべて閉じればプライベート空間になるし、開ければ見通しの良い開放的な空間が生まれます。
建具であれば、設計段階から計画的に導入することでユニークな提案ができそうです。ブラインドを設置する場合も、電源の確保など設計時に対応することできれいに取り付けることができます。このあたりのことは住宅メーカー側の課題ですね。
ところでナニックのウッドシャッターには縦型、横型と色々なスタイルがありますが、木材も選べるのですか?
はい。ナラ材やヒノキ材を使ってほしいというリクエストもあります。ご要望があれば木材の仕入れから対応致します。
カーテンと違って一度設置してしまうと修理が難しそうですが…。
ショールームは東京にしかありませんが、関東以外にも代理店があるので、修理に伺うことも可能です。取り外しができるパーツであれば、事前にお問い合わせいただき、当社宛に送ってください。日本中どこでも修理対応させていただきます。
木製ブラインドによっては10年以上使っていただくことも多く、故障しても愛着があるから新品を買うより修理して使いたいという方もいらっしゃいます。メカの部分だけを交換することもできるので、状況に応じて柔軟に解決策をご案内させていただいております。
もっともっとたくさんの人にナニックの木製ブラインドとウッドシャッターの魅力を知っていほしいですね。フクダ・ロングライフデザインでも設計段階からお客様に提案していきたいと思います。
本日はありがとうございました。
住宅のプロの方々の目線で色々と教えて下さい。こちらこそ、ありがとうございました。
ナニックの戸田工場をご案内いただきました。木材の加工から塗装まで、すべての作業を行うこの工場では、各分野の職人さんが木製ブラインドのパーツを丁寧に仕上げていく様子を見ることができました。塗装の工程では色ごとにローラーを替えるなど手間のかかる作業も多く、ナニックの色に対する強いこだわりを感じられます。快く撮影や取材にご協力いただいた工場の皆様、ありがとうございました。
carbonではナニックの木製ブラインドを販売しています。カラーサンプルや施工イメージをご覧になりたい方はお気軽に店舗までお問い合わせください。